加盟店が幸せになる仕組みづくり! 元FC加盟店が設立した高齢者向け配食サービス

高齢者配食サービス「ライフデリ」を運営するグランフーズの小川社長は、20代のころに大手配食サービスに加盟。やりがいを感じる一方で、本部に対して疑問を感じて契約を解除しました。そのときの加盟店としての悩みをもとに、加盟店が幸せになる仕組みづくりをコンセプトに「ライフデリ」を創業。その背景について語ります。(インタビュー:フランチャイズWEBリポート)

リクルートの営業として働いているなかで「独立」を意識

地域に密着できる高齢者ビジネスとして注目を集める配食サービス

小川
もともと、配食サービスを展開するフランチャイズに加盟し、5年くらい加盟店として高齢者の方々にお弁当を届けていました。でも、契約更新の際に大幅な内容変更があり、本部に対する疑問や窮屈さを感じることがあったんです。そこで、自分が納得するかたちで配食事業を展開していこう。そう考えてライフデリを立ち上げました。

そう語るのは、高齢者配食サービスの「ライフデリ」を運営する株式会社グランフーズの小川雄一郎代表取締役。同業種のFCに加盟していたときに感じたことや悩みをもとに、自身で新たな高齢者向け配食事業を立ち上げ、170店舗をフランチャイズ展開するまでに拡大させました。今後ますます需要が拡大する高齢者向けビジネスの中でも、加盟金や保証金だけでなく、月々のロイヤリティも0円という加盟店に寄り添ったシステムにより、注目を集めているフランチャイズチェーンのひとつです。

今でこそグランフーズの代表を務める小川社長ですが、大学卒業後は、飲食とは程遠いIT系の企業でシステムエンジニアとして勤めていました。しかし、入社したのは超大手の企業。大きなプロジェクトの歯車のひとつとして働くことに違和感を覚え、1年半で退職。その後に入社したのは、大手の広告代理店として名を馳せる「リクルート」だったのです。

小川
3年で必ず卒業(退社)するというリクルートの採用制度を利用し、ホットペッパーグルメの営業として入社しました。3年働いた後に何をしたいか特に決まってなかったんですが、売上を左右する広告の営業なら、経営者に会っていろいろな話をできるので勉強になるかな、と。

今後のキャリアに活かしたい一心で営業に勤しむ小川社長ですが、いつの日か「独立」というものを意識するようになるのです。

小川
会社員として働いていたときに、もっと自分で新しいことをやってみたいと感じることがありました。営業として経営層と話をしていくうちに、『自分も経営者になれそうだな』って感覚的に思ったんです。中でも、普段から利用する飲食関係であれば取っつきやすいな、と。

とはいえ、それまで実際に経営に携わった経験がなかったことから、いきなりオリジナルの事業で独立するにはリスクが高すぎる——そう考え、飲食系フランチャイズでの独立に向けて一歩を踏み出すのです。

市場の将来性を感じて高齢者向け配食サービスのFCに加盟

フランチャイズの展示会なども利用し、さまざまな本部から加盟先を選んだ小川社長

小川
FCフェアなどにも足を運んで、色々なフランチャイズ本部を見て周りました。でも、貯金が100万円足らずしかなかったので、その上で加盟できる飲食フランチャイズチェーンとなるとデリバリーとかに限られてくるんです。そこで、将来の成長性にも期待できる高齢者向けの市場とデリバリーを掛け合わせた、配食サービスに加盟することにしました。

いまから13年前、当時26歳にして「独立」を果たした小川社長は、当時の事をこう振り返ります。

小川
会社員の時よりもすごく自由度がありました。キャンペーンを実施したり、チラシやホームページを作ったりと、自分で考えたことができるのは面白かったですね。それに、毎日高齢者の方々にお弁当をお届けして感謝をされるので、やりがいのある事業だと感じていました。

仕事に大きなやりがいを感じるとともに、順調に売り上げを伸ばしていった小川社長。しかし、そんな状態が長く続くことはなく……。事業が順調に進むのとは裏腹に、加盟から年月が経つにつれて本部に対する疑問や窮屈さを感じるようになるのです。

小川
契約更新のタイミングで新しい契約書が送られてきたんですよ。それが、新規契約のときに交わした内容よりもルールが事細かく厳しくなっていて。しかも、加盟時に100万円くらいかけて一括購入した管理システムを、加盟から3年目くらいで、全部レンタルに切り替えるから最初に買ったやつは必要ないって通達があったんです。新たなシステムのレンタル代を毎月4万数千円お支払いください、と。それで『新しい契約内容に従わないと契約更新しない、嫌なら辞めてください』と一方的に言われました。こっちは開業時の借金がまだ残ってるんだぞ、と怒りましたね。

本部に対する疑問や窮屈さを感じ、フランチャイズを脱退

ライフデリ本部にある全国開業MAP。加盟者の写真が日本地図を彩る

「ビジネスモデルは申し分ないのに、これでは、加盟店からむしり取ってるだけじゃないか」――そう考え、当時加盟していたフランチャイズ本部と「決別」するという道を選択。その後、一念発起して2004年に立ち上げたのが「株式会社グランフーズ」なのです。

小川
そもそも、高齢者向けの配食サービス自体が必要とされていますからね。というのも、介護施設をどんどん作って入居してもらう流れから、現在は在宅での介護に変化してきている。とはいえ、各ご家庭で高齢者向けの減塩食やきざみ食を用意するのって大変じゃないですか。それよりも、配食サービスなどを利用していただくことで、ヘルパーさんやご家族の方には食事以外の介護に注力してもらう。そういう意味では、ものすごく市場にマッチしたビジネスモデルなんですよ。

グランフーズの営業開始後、契約してくれる工場や食材の仕入先を自ら探し、どうにか高齢者への配食事業を運営できる状態に持っていった小川社長。それと同時に、介護施設へ食材を供給する卸売業も展開するなど、会社を拡大していくのです。

ライフデリで使用する食材はおもに冷蔵食材。冷凍とは違い、自然な食感がおいしさの秘訣

小川
当時は介護施設や、配食サービスを展開する他のフランチャイズチェーンにも食材を卸していましたが、そこのチェーンが150店舗くらいまで拡大したところで契約が解除されたんですよ。そこで、これからは自分で配食サービス事業のほうをフランチャイズ展開していこうと考えました。加盟店の立場も経験してますし、食材を卸していたときに大手配食チェーンの本部の仕組みを間近で見ていたので、できるだろう、と。

これまでの経験を総動員して2012年にフランチャイズ展開をスタートさせた高齢者配食サービス「ライフデリ」。もちろん、小川社長が加盟店時代に感じていた本部への疑問や窮屈さをなくした。

関わるすべての人が幸せになる仕組みづくりを目指す

工場から配送された食材は、全国にある店舗で容器に盛り付けて高齢者のもとへ届けられる

中には、加盟金や保証金などを高額に設定し、そこで大きな利益を上げるフランチャイズ本部があることも事実。しかし「ライフデリ」では、加盟金や保証金はもちろん、月々のロイヤリティも0円なのです。

小川
加盟金40万円でスタートしましたが、実は最初から『加盟金0円キャンペーン』をやっていたんです。でも、どうせキャンペーンで0円になるなら、加盟金自体をなくしてしまおう、と(笑)。フランチャイズ本部のなかには加盟金を取らない代わりに、月々のロイヤリティを高く設定しているところもありますが、ライフデリでは月々のロイヤリティもいただいていません。加盟店から毎月いただくのは、固定の会費と受発注や予約管理システムの利用料を含めた4万8000円だけ。毎月の経費は固定なので、加盟店は頑張れば頑張るほど利益が上がる仕組みというのもポイントです。

また、開業資金が低く、加盟者だけが金銭的なメリットを得られるわけではありません。配食サービスを利用する高齢者にとっても安く利用できるのが、ライフデリの強みでもあるのです。

小川
安くていいものを提供したいという思いで、1食あたりのコストは競合の中でも最安値。エリアにもよりますが、大手配食サービスのフランチャイズチェーンよりも1食あたり50円くらい安いですね。コストを抑えようとすると、安く仕入れられる海外産の冷凍食材を使い勝ちですが、ライフデリでは8割以上の野菜を国内の契約農家から仕入れるなど、国内比率を上げていく取り組みをしています。

ただ、それでは事業として成り立たないのでは?——そう心配する声も少なくないはずです。加盟金などで利益を上げることもなければ、競合と比較しても1食あたりのコストが安い。そのうえ、素材や献立にこだわったクオリティの高い弁当を利用者に提供できているのは、いったいなぜなのでしょうか。

小川
無駄だと思うことは徹底的に省きました。加盟店時代に月一くらいでスーパーバイザー(以下、SV)が来て、ただ雑談をして帰る、みたいなことがあったんです。なので、これはライフデリではやってません。衛生面のチェックなどは食を扱う我々にとっては必要不可欠ですが、SVがやらなくても、保健所がやってくれるんです。そういう行政のサービスを利用する等して経費をカットしています。

SVがいないとはいえ、本部と加盟店がコミュニケーションを取っていないわけではありません。ライフデリでは、オンラインでやり取りできる独自の「掲示板」を開発し、加盟店と本部がなんでも言い合える場を設置。これにより、普段抱いている疑問をすぐに解決したり、本部に対して意見や提案をしたりすることができるのです。

加盟者やお客様だけでなく、本部、メーカー、生産者などの「関わるすべての人が幸せになる仕組みづくり」をコンセプトに事業展開を進める小川社長。今後も加盟者はもちろん、利用者にも寄り添った高齢者配食サービスとして、スピードを緩めることなく成長し続けます。